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オール家電や省エネ住宅が普及する中で、太陽光発電システムや家庭用蓄電池を導入した戸建てや集合住宅が増えていますが、導入プランを考える上で、実際にどれだけのコストやパフォーマンス(節約効果)を長期的に得られるのかシミュレーションすることが欠かせません。
例えば太陽光発電システムの場合、導入コストに対して利益性が発生するのは数十年後とされていますが、家庭用蓄電池についてもやはり導入コストをパフォーマンスによってペイしようとすれば、少なくとも現代の科学技術では10年以上という長期的視野で見なければならないことも現実です。
ただし、そもそも住宅設備やシステムは10年で交換してしまうものでなく、長期的な生活や利用を想定している上、今後の卒FITによる売電価格の低下や電気料金の値上げも考慮すれば、現時点で導入しておいた方が損失を抑えられる可能性もあるでしょう。
蓄電池の導入メリットやコストパフォーマンスを考える上で、システムや技術ごとの特性や違いを把握しておくことも大切です。
国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST)が発表している情報によると、一般的に想定される蓄電池の種類とコストには以下のような関係があります。なお、蓄電環境が理想的なものとして維持されていることが前提です。
上記の結果を参照すると、NAS電池システムが蓄電コストに関して最も低い結果になっていますが、一方で稼働時に常時300度程度を維持しなければならないなど環境面でのコストが増加するため、トータルのコストパフォーマンスでは必ずしも低コストにならないといった注意点があります。
対してリチウムイオン電池は蓄電効率がNAS電池やレドックスフロー電池よりも高い反面、蓄電コストが他の2種類と比較して高く推定されていることもポイントです。これはリチウムイオン電池そのものの充放電効率は優れているものの、単電池の集合化による制御系の配線ロスや電力消費があることが理由として推定されています。
※参照元:国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST)|低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書 JSTトップ (https://www.jst.go.jp/lcs/proposals/fy2019-pp-01.html)
理論値で考えた場合、蓄電池として蓄電効率が高ければ、長期的に考えてコストパフォーマンスを高められると期待できますが、現実的には蓄電効率が高くてもコスト面が高くなってしまい、トータルのコストパフォーマンスを見ればそこまで期待通りでないというケースは少なくありません。
問題は上記で解説したリチウムイオン電池のように、蓄電池のシステムそのものが高効率であったとしても、実際に電源として利用する上で様々なロスが発生するという点です。
またリチウムイオン電池には高エネルギー型(三元系)や長寿命型(SCiB)といった複数のタイプがあり、それぞれに性質があることも重要です。
例えば高エネルギー型は量産体制の整備によって低コスト化が進んでいますが、長期的な性能を比べると長寿命型に及びません。一方、長寿命型は長期的な機能に優れていますが、製造コストが高いといった点がデメリットです。
蓄電池のコストパフォーマンスやコストメリットを考えるためには、そもそも蓄電池技術や蓄電池のシステムだけでなく、使用する環境や必要とするエネルギー密度、利用期間など様々な条件にもとづいて多角的に検討しなければなりません。
例えば常にハイパワーの電力消費を前提としている場合と、節電モードを利用する場合では、リチウムイオン電池を選択するにしても適性が変わってくるでしょう。
太陽光発電システムと蓄電池を合わせて導入した場合、発電した電池を売電目的で活用するのか、それともまず自宅用に消費して余剰分を売電するのか、目的に合わせて選択できます。
この場合、電力会社へ売る価格の方が、電気を買う料金よりも高ければ、売電優先モードを選択した方が経済性は高くなると想定されます。一方、電気代の高くなるタイミングで蓄電池の電気を利用すれば、売電優先よりも自家消費モード(環境優先モード)の方がトータルのコストパフォーマンスを高められるかも知れません。
そのため、ライフスタイルや電力料金などをベースとしながら、売電優先モードと自家消費モードの割合をシミュレーションしていくことが大切です。
ダブル発電とは「押し上げ効果あり」の蓄電池で利用できる方式であり、電気代が下がる夜間に蓄電しておき、日中の電気使用を蓄電池の電気でまかないつつ、太陽光発電システムによる売電量を増やす発電方式です。
一方のシングル発電とは、太陽光発電システムが作動中に余剰電力が発生する時間帯について、蓄電池の電気を利用できないシステムとなります。
FIT期間内においてダブル発電とシングル発電では売電価格が別々に設定されており、2018年以前に設置した太陽光発電システムへダブル発電機能ありの蓄電池を搭載した場合、売電単価が低下してしまうため注意してください。
蓄電池は効果的に運用することで経済性を追求していくことも可能ですが、そのためには様々な条件を多角的に検討してプランニングしなければなりません。そのため導入段階のコストだけでなく将来的なコストの変動や社会情勢についても考慮しながら、なるべくイニシャルコストを抑えて設置できるよう信頼できる業者を探すことが大切です。
九州にある蓄電池設置業者の中から、余計な中間マージンが発生せずアフターメンテナンスなども迅速な「自社施工」で、且つ太陽光発電に関することならなんでも知っている「太陽光発電専門」の業者を、創業年数の長い順に3社紹介します。(2021年2月時点)